なぜそのサイトは分かりにくいのか?UIより重要な”言葉と構造”の情報設計と解決策
「このサイト、なんだか分かりにくいな…」
そう感じてページを閉じた経験は、誰にでもあるはずです。実際、Webサイトの平均滞在時間は1分未満で、多くのユーザーは10〜20秒でそのページに価値があるかを判断しています。多くの人は「デザインが悪い」「UIが使いにくい」と考えがちですが、実は本当の原因は別のところにあります。
1. そもそも、なぜ人は「分かりにくい」と感じるのか?
1-1. ユーザーは”迷った瞬間”に離脱する
現代のユーザーは驚くほど短気です。ユーザビリティ研究の第一人者であるヤコブ・ニールセンの研究によると、ユーザーは10秒以内にそのページに価値があるかを判断し、多くの場合10〜20秒でページを離脱するとされています。つまり、サイトを開いて数秒以内に「自分の求めているものがありそうか」を判断し、分からなければ即座に離脱してしまうのです。
この判断基準は意外にシンプルで、以下の3つの疑問に瞬時に答えられるかどうかです:
- 「これは何のサイト?」(サービス内容の理解)
- 「自分に関係ある?」(ターゲットとの一致)
- 「次に何をすればいい?」(行動の明確さ)
美しいビジュアルも、洗練されたアニメーションも、この3つの疑問に答えられなければ意味がありません。
1-2. UIの前に考えるべきは「伝わる構造」
多くのWeb担当者が「UIを改善すれば使いやすくなる」と考えますが、これは順番が逆です。
優れたUIは、明確な情報構造の上に成り立ちます。どんなに操作しやすいボタンでも、そのボタンが何を意味するのか分からなければ押されません。どんなに美しいレイアウトでも、情報の優先順位が曖昧なら、ユーザーは迷子になります。
良いサイトの法則:情報設計 → 言葉の設計 → UI設計
この順番を守ることで、ユーザーにとって本当に分かりやすいサイトが生まれます。ニールセンも、「ディスカウント・ユーザビリティ」として、安く早く実行できるユーザビリティ向上術を提唱しており、高額なデザイン改修よりも、まずは基本的な情報設計と言葉の改善から始めることの重要性を説いています。
2. 「分かりにくさ」の正体は3つの構造にある
分かりにくいサイトを分析すると、必ず以下3つの構造的問題のいずれかに該当します。これらの問題は、ニールセンの「ユーザビリティ10原則」でも言及されている根本的な課題と一致しています。
2-1. 必要な情報が見つからない・足りない
問題の例: • 料金が分からない(「お問い合わせください」ばかり) • 具体的な事例や実績が見当たらない • よくある質問に、本当によくある質問が載っていない
弊社での改善事例: あるWebコンサルティング記事の制作依頼で、最初の構成案では「UIよりも言葉と構造が重要」という抽象的な主張だけが並んでいました。しかし読者が本当に知りたいのは「具体的にどう改善すればいいのか」「実際にどのくらい効果があるのか」でした。
実際の事例: あるBtoBサービスのサイトでは、トップページに「最適なソリューションを提供」とあるものの、具体的に何ができるのか、いくらかかるのかが一切記載されていませんでした。結果として、興味を持った見込み客も「結局何をしてくれるの?」という疑問を抱いたまま離脱してしまいます。
ユーザーの心理: 「結局、何円かかるの?」「本当に効果があるの?」という疑問に答えられないサイトは、信頼を失います。
改善のポイント: ユーザーが知りたい情報を、知りたいタイミングで提供する。ニールセンの原則では「システム状態の可視性」として知られており、ユーザーが現在の状況を把握できることの重要性が強調されています。特に価格、期間、効果については、可能な限り具体的に示すことが重要です。
2-2. 専門用語や曖昧な表現で伝わらない
問題の例:
• 「ソリューション」「エンゲージメント」「アセット」などの横文字乱用
• 「最適化」「効率化」「高品質」などの抽象的な表現
• 業界用語をそのまま使用(一般ユーザーには理解不能)
弊社での改善事例: この記事の初稿では「分かりにくいサイトの正体とは?UIではなく”言葉と構造”が原因な理由」というタイトルでした。しかし、より具体的で検索されやすくするため「なぜそのサイトは分かりにくいのか?UIより重要な”言葉と構造”の設計法」に変更。
また、「ヒューリスティック評価」「認知負荷」といった専門用語についても、必ず日常語での説明を併記するようにしました。例えば「ニールセンの10原則」と書く際も「ユーザビリティ研究の第一人者が提唱した、使いやすいサイト作りの指針」といった補足を加えています。
ユーザーの心理: 「なんとなく良さそうだけど、結局何をしてくれるの?」という疑問を抱き、理解を諦めてしまいます。
改善のポイント: 専門用語は必ず日常語に翻訳する。ニールセンの原則では「システムと現実世界のマッチ」として、ユーザーの馴染みのある言葉を使うことの重要性が説かれています。「効率化」ではなく「作業時間が半分に」、「最適化」ではなく「月5万円のコスト削減」など、具体的な変化を示しましょう。
2-3. 情報の優先順位が不明確でナビゲーションが機能しない
問題の例:
• 重要な情報が埋もれている
• メニューの項目名が分かりにくい
• 関連性のない情報が同じレベルで並んでいる
弊社での改善事例: この記事の構成検討時、最初は「5つの原因」「7つの改善方法」など、項目数がバラバラで読者が混乱する構成になっていました。
そこで、以下のように整理しました:
▸ 問題を3つの構造に集約(情報不足、言葉の問題、構造の問題)
▸ 改善方法も3つの視点で統一(導線設計、翻訳力、情報設計)
▸ まとめとFAQで実践的な情報を追加
この結果、「問題→原因→解決策→実践」という自然な流れができ、読者が迷わずに読み進められる構成になりました。
実際の事例: ある士業事務所のサイトでは、「業務案内」「サービス内容」「取扱業務」という似たようなメニューが3つ並んでおり、どこに何があるのか分からない状態でした。また、「緊急性の高い相談」も「一般的な相談」も同じレベルで表示されているため、緊急度の高いユーザーが迷子になってしまいます。
ユーザーの心理: 「どこから見ればいいの?」「何が一番重要なの?」と混乱し、サイト内を迷子になります。
改善のポイント: 情報に明確な階層を作り、ユーザーの関心度に応じて優先順位を付ける。これはニールセンの「記憶しなくても、見て理解できるデザイン」の原則に通じており、ユーザーが迷わずに次の行動を取れるような設計が重要です。「初めての方はこちら」「よくご利用の方はこちら」のような道筋を示すことが効果的です。
3. UIよりも”言葉と構造”が重要な理由
3-1. コピーが「行動を決めるスイッチ」になる
ユーザーがクリックするかどうかは、ボタンのデザインよりも、そこに書かれた言葉で決まります。
効果的なコピーの例:
- 「お問い合わせ」→「30秒で分かる無料診断」
- 「資料請求」→「成功事例集をダウンロード」
- 「詳しく見る」→「導入企業の声を読む」
同じ機能でも、言葉を変えるだけでクリック率が2倍、3倍になることは珍しくありません。ユーザーは「何が得られるか」が明確でない限り、行動を起こしません。
3-2. デザインは”伝える土台”、言葉は”導く力”
美しいデザインは確かに重要ですが、それは「伝える土台」にすぎません。ユーザーを実際に行動に導くのは、適切な言葉です。
デザインの役割:
- 信頼感を演出する
- 情報を整理して見やすくする
- ブランドイメージを伝える
言葉の役割:
- 具体的な価値を伝える
- 行動を促す
- 疑問や不安を解消する
どちらも重要ですが、言葉の設計を疎かにしては、どんなに美しいデザインも意味をなしません。
4. 改善するために必要な3つの設計視点
4-1. ユーザーレベル別の導線設計
すべてのユーザーを同じ導線で案内しようとすると、誰にとっても分かりにくいサイトになります。
初心者向け導線:
- 基本的な説明から始める
- 具体例を多用する
- 不安解消のコンテンツを充実させる
上級者向け導線:
- 詳細な機能説明
- 比較表やスペック情報
- 導入事例や技術的な詳細
設計のコツ: トップページで「初めての方」「詳しく知りたい方」のような入口を分けることで、それぞれに最適化された情報を提供できます。
4-2. 専門用語を日常語に翻訳する力
業界の常識は、一般ユーザーの非常識です。専門用語を使う前に、必ず「中学生でも理解できるか?」を自問しましょう。
翻訳の例: → 「ROI向上」 ⇒ 「投資した分以上の利益が得られる」 → 「UX改善」 ⇒ 「使いやすさを向上させて、お客様の満足度を高める」 → 「アナリティクス」 ⇒ 「数字で効果を測定・分析」
翻訳のコツ: 専門用語を使った後に、必ず「つまり〜」「具体的には〜」で日常語での説明を加える癖をつけましょう。
4-3. ユーザーの疑問に先回りする情報設計
ユーザーがサイトを見る際に抱く疑問を予測し、適切なタイミングで情報を提供することが重要です。
疑問の発生タイミングと対策:
サイト訪問直後:
- 疑問:「これは何のサイト?」
- 対策:キャッチコピーで事業内容を明確に示す
サービス内容を見た後:
- 疑問:「本当に効果があるの?」
- 対策:具体的な数字や事例を提示
申し込み直前:
- 疑問:「失敗したらどうしよう?」
- 対策:保証制度や返金制度の説明
このような「疑問の先回り」により、ユーザーの不安を解消し、スムーズな行動を促すことができます。
5. まとめ:優れたサイトは”言葉だけ”で価値が伝わる
5-1. チェックポイント:「誰に、何を、なぜ」が一瞬で分かるか
分かりやすいサイトかどうかは、以下の3つの質問で判断できます:
- 「誰に」 – ターゲットが明確か?
- 「何を」 – 提供する価値が具体的か?
- 「なぜ」 – 選ぶべき理由が明確か?
これらの答えが、サイトを開いて3秒以内に分かるかどうかが、成功するサイトの分かれ道です。
5-2. 次のアクション:自社サイトの言葉と構造を見直そう
UIの改善に取り組む前に、まずは以下の点を見直してみましょう:
すぐにできる改善:
- 専門用語を日常語に置き換える
- 曖昧な表現を具体的な数字や事例に変える
- ユーザーの疑問に答える情報を追加する
中期的な改善:
- ユーザーレベル別の導線を設計する
- 情報の優先順位を見直す
- コピーライティングを改善する
分かりやすいサイトは、一朝一夕には作れません。しかし、ユーザーの視点に立って「言葉と構造」を見直すことで、確実に改善できます。
美しいデザインは目を引きますが、適切な言葉と構造は心を動かします。ユーザーの行動を変えるのは、結局のところ、伝わる言葉なのです。
この記事のまとめ
分かりにくいサイトの3つの原因
- 情報不足 必要な情報が見つからない・足りない
- 言葉の問題 専門用語や曖昧な表現で伝わらない
- 構造の問題 情報の優先順位が不明確
改善のための3つの設計視点
- ユーザーレベル別の導線設計 初心者と上級者を分けて案内
- 専門用語の日常語への翻訳 中学生でも理解できる言葉に
- 疑問の先回り設計 ユーザーの不安を事前に解消
成功するサイトの条件
◆ 「誰に、何を、なぜ」が3秒で分かる
◆ 言葉だけで価値が伝わる
◆ UIより言葉と構造を重視
よくある質問(FAQ)
Q1. デザインを変えずに分かりやすくする方法はありますか?
A. はい、可能です。まずは以下の順番で改善してみてください:
- 専門用語を日常語に置き換える
- 曖昧な表現を具体的な数字や事例に変える
- ユーザーの疑問に答える情報を追加する
デザインを変えずとも、コピーライティングの改善だけで大幅に分かりやすくなります。
Q2. 改善効果はどのくらいで現れますか?
A. 言葉の改善は即効性があります。キャッチコピーやボタンの文言を変更した場合、早ければ1週間以内に効果が現れることもあります。一方、情報構造の改善は1〜3ヶ月程度の時間が必要です。
Q3. 専門用語をすべて日常語に変えると、専門性が伝わらなくなりませんか?
A. 専門用語を完全に排除する必要はありません。重要なのは「専門用語 + 日常語での説明」のセットで伝えることです。例:「ROI(投資収益率)を向上させ、投資した分以上の利益を生み出します」
Q4. 小さな会社でも、大手企業と同じような分かりやすいサイトは作れますか?
A. むしろ小さな会社の方が有利です。大手企業は多くの部署や商品があるため、情報が複雑になりがちです。小さな会社なら、シンプルで分かりやすいメッセージを伝えやすく、ユーザーとの距離も近いため、より親しみやすいサイトを作れます。
Q5. 改善すべき優先順位はありますか?
A. 以下の順番で改善することをおすすめします:
- トップページのキャッチコピー – 最も多くの人が見るため
- 料金・価格情報 – ユーザーの関心が高い
- お問い合わせボタンの文言 – 行動に直結する
- サービス説明の専門用語 – 理解度に大きく影響
- 導線設計 – 全体の使いやすさに関わる
Q6. 自分で改善するのと、専門家に依頼するのとでは、どちらがよいですか?
A. まずは自分で改善してみることをおすすめします。この記事で紹介した基本的な改善(専門用語の翻訳、具体例の追加など)は、自社で十分に対応可能です。その後、より高度な改善や大幅なリニューアルが必要な場合に専門家に相談するのが効率的です。
Q7. 改善効果をどのように測定すればよいですか?
A. はい、Webサイトもコンテンツも同じ原則が適用できます。弊社でも、この記事の制作過程で実際に以下の改善を行いました:
情報不足の解決:
✓ 抽象的な主張だけでなく、ニールセンの研究データを追加
✓ 匿名化した具体的な企業事例を複数掲載
✓ 「明日から始められる行動」を具体的に提示
言葉の問題の解決:
✓ タイトルをより具体的で検索されやすい表現に変更
✓ 専門用語には必ず日常語での説明を併記
✓ 「ヒューリスティック」→「使いやすさの指針」のような翻訳を実施
構造の問題の解決:
✓ バラバラだった項目数を「3つ」で統一
✓ 「問題→原因→解決策→実践」の自然な流れを構築
✓ まとめとFAQで読者の疑問を先回り
この結果、読者が迷わずに最後まで読める記事構成になりました。コンテンツもWebサイトも、ユーザー(読者)目線での設計が最も重要です。
一般的に、滞在時間が30%以上増加、問い合わせ数が20%以上増加すれば、大きな改善効果があったと言えます。ニールセンの研究でも、基本的なユーザビリティ改善により、サイトの使いやすさが230%向上するケースがあることが報告されています。Google Analyticsなどの無料ツールで簡単に測定できます。
参考文献・関連リンク
ニールセンのユーザビリティ研究
ニールセン・ノーマン・グループ公式サイト
https://www.nngroup.com/
ユーザビリティ10原則(英語原文)
https://www.nngroup.com/articles/ten-usability-heuristics/
ユーザビリティ10原則(日本語版)
https://u-site.jp/alertbox/ten-usability-heuristics
How Long Do Users Stay on Web Pages?
https://www.nngroup.com/articles/how-long-do-users-stay-on-web-pages/
関連記事・資料
ヒューリスティック評価の実施方法
https://www.nngroup.com/articles/how-to-conduct-a-heuristic-evaluation/
複雑なアプリケーションへのユーザビリティ10原則の適用
https://www.nngroup.com/articles/usability-heuristics-complex-applications/
※これらのリンクは2025年7月現在のものです。リンク先の内容は変更される場合があります。