BtoBマーケティング支援ポリシー

はじめに

このページは、フェノメノン株式会社がBtoBマーケティング支援にどう向き合っているかを記したものです。サービス案内でも契約条項でもなく、私たちが何を考え、どのような姿勢で支援に臨んでいるかを、依頼を検討される方、共に働く方、そして既にご一緒している方に向けて開示するためのものです。

私たちの支援は、いくつかの確信に支えられています。以下に記すのは、その確信の輪郭です。

1. マーケティングは、経営課題である

私たちは、マーケティングを広告運用やコンテンツ制作といった機能の集合体としては捉えていません。マーケティングとは、事業が誰のために存在し、何によって選ばれるのかを定義し、その選ばれる構造を市場の中に実装していく営みです。それは本来、経営の中枢で扱われるべき問いであり、施策レベルの議論に閉じてはならないものだと考えています。

フェノメノンの中核には、複数社でCMOを務めてきた経験があります。事業計画と整合しないマーケティング戦略、現場の実行に接続されない経営方針、その双方が事業を停滞させる構造を、私たちは内側から見てきました。だからこそ、私たちが提供する支援は、マーケティングの議論をマーケティングだけで完結させません。事業構造、競争環境、組織の実装能力を含めた地平で、課題を捉え直すことから始めます。

2. 分断を起こさない

BtoBマーケティングの現場で繰り返し起きている問題は、分断です。

戦略コンサルが描いた構想は、実行の解像度を欠いたまま現場に渡され、机上の文書として終わります。実行を担う代理店や制作会社は、戦略意図から切り離された効率最適化に収斂し、いつのまにか「何のための施策か」が見えなくなっていきます。これは戦略と実行の分断です。

同じことが、マーケティング部門と営業部門の間でも起きています。マーケが獲得したリードが営業に渡らず放置される。営業が現場で得た顧客の声がマーケに還流されない。SDR、インサイドセールス、フィールドセールスがそれぞれのKPIを最適化するあまり、顧客から見た一貫した体験が断片化していく。分業の設計思想として導入されたはずのThe Model型の組織が、いつのまにか部門間の壁を強化する装置として作用してしまう。これはマーケと営業の分断です。

私たちは、これらを別の現象とは捉えていません。考える人と動かす人、獲得する人と受注する人、戦略を描く人と数字を追う人——役割が分かれた瞬間に責任の所在が曖昧になり、最終的な事業成果への視線が失われる。これがBtoBマーケティングを停滞させている構造です。

私たちの支援は、この分断を起こさないことを軸に設計されています。戦略の策定段階から実行設計を内包し、実行の過程で得られた事実を戦略に還流させる。マーケティング施策の設計段階から営業プロセスを織り込み、リードの質と量を営業の受注率から逆算する。部門の境界を越えて、事業成果という一つの目的に向かって機能させる。これを、外部に委ねることのできない中核機能として、私たち自身が担います。

3. ひざを突き合わせて考える

私たちは、クライアントを「発注者」、自分たちを「受注者」とは捉えていません。

外部支援者と事業会社の関係は、ともすれば一方が要件を出し、もう一方がそれに応える、という構図に陥りがちです。しかし、BtoBマーケティングの本質的な課題は、要件として整理された時点で半ば解かれているものではなく、何が課題なのかを定義する地点から共に考えなければ見えてこないものです。私たちが目指しているのは、その定義の地点からクライアントとひざを突き合わせて考える関係です。

私たちは、聞き分けのよい外部支援者であろうとはしません。クライアントの意向と事業の合理が食い違うと判断したときは、その違和感を率直に伝えます。場合によっては、提案を引っ込めることも、依頼の前提そのものを問い直すこともあります。それは反論のための反論ではなく、事業成果という共通の目的に向かって、互いの視点を擦り合わせるための行為です。

ひざを突き合わせる、という言葉には、対等であること、距離を詰めること、時間をかけて向き合うこと、そのすべてが含まれていると私たちは考えています。立場を超えて事業を一緒に考える関係こそが、本当に意味のあるBtoBマーケティング支援を成立させる土台です。

4. ファブレスという選択

私たちは、戦略立案、案件設計、品質統括を社内で担い、制作・開発・運用といった実行領域は、案件ごとに最適なパートナーと専門人材で組成しています。ファブレスモデルと呼ばれる事業形態です。

このモデルを採用しているのは、コスト構造の合理性のためだけではありません。むしろ、固定的な実行リソースを抱えることが、支援の質を歪めるからです。社内に大きな制作部門を抱える組織は、その稼働率を埋めるための提案を無意識のうちにしてしまいます。社内にSEO専門部隊を抱える組織は、SEOが最適解でない場面でもSEOを推してしまいます。手段を持つことは、判断を縛ります。

私たちは、自らに手段を持たないことで、クライアントにとっての最適を、利害から自由に考え続けられる立場を維持しています。組成されたチームの成果に対する責任は、当社が一元的に負います。窓口も、品質保証も、私たちが引き受けます。ただし、その実行が誰の手によって最も良くなされるかは、案件ごとにゼロから考えます。これが、私たちの選んだやり方です。

5. 私たちが扱う領域

私たちは、BtoBマーケティングを戦略から営業連携までの一連の流れとして扱います。特定の領域の専門家として狭く深く関与するのではなく、各領域が事業成果に向かって整合しているかを見続けることを役割としています。

戦略レイヤーでは、BtoBマーケティング戦略の設計、ポジショニング、メッセージング、ターゲットセグメントの定義、ABMの設計などを担います。事業フェーズと競争環境に応じて、どの顧客層に、どのような価値提案で、どの順序でアプローチするかを定義します。

獲得レイヤーでは、デジタル広告の運用(Google、Meta、その他主要媒体)、SEO、LLMO、コンテンツマーケティング、ホワイトペーパーやウェビナーの企画運営などを担います。チャネルごとの最適化に閉じず、獲得したリードが営業プロセスで機能する状態を前提に設計します。

リード管理レイヤーでは、マーケティングオートメーション(HubSpot、Pardot等)の設計と運用、リードナーチャリング、スコアリング、CRMとの連携、データ統合を担います。リードを獲得すること自体が目的化しないよう、商談化率と受注率から逆算した管理設計を行います。

営業連携レイヤーでは、マーケと営業の接続設計、SDRやインサイドセールスの立ち上げ支援、フィールドセールスへの引き継ぎプロセスの設計、営業現場の声をマーケに還流させる仕組みづくりを担います。マーケと営業を一つの収益創出プロセスとして捉え、KPIと業務フローの両面から統合を進めます。

組織・運用レイヤーでは、マーケティング組織の立ち上げ、内製化支援、CMO機能の代行、メンバーの育成と評価設計を担います。仕組みだけでなく、それを動かす人と組織が持続的に機能する状態を目指します。

これらの領域に対して、私たちは案件ごとに必要な範囲を切り出して支援する場合もあれば、全体を統括する立場で関わる場合もあります。重要なのは、どの範囲を担当するにせよ、それが事業全体の中でどう機能するかを常に把握した上で関与することです。

6. エビデンスは、合意よりも重い

私たちは、業界の通説や過去の成功事例を、判断の根拠としては扱いません。それらは出発点としての仮説であり、当該クライアントの事業文脈における妥当性は、別途検証されなければならないものです。

「BtoBでは○○が定石である」という言説の多くは、特定の時代の特定の市場で成立した方法論を、一般則として拡張したものにすぎません。私たちは、その種の一般則を一度疑い、目の前の事業に対して何が効くのかを、一次情報と定量的な根拠から組み立て直します。これは慎重さの問題ではなく、誠実さの問題だと考えています。

7. 短期の数字より、事業構造を見る

支援の評価軸として、短期のKPIを否定するつもりはありません。それは事業の健全性を測る重要な指標です。ただし、短期の数字の最大化が、中長期の競争優位を毀損する場面は、BtoBにおいて頻繁に起きます。

リード数を追ったために、営業の負担が増え、受注率が下がる。CPAを下げたために、ブランドの認知層が痩せ、3年後の指名検索が減る。私たちは、こうした構造的な代償を可視化した上で、クライアントが自社の事業フェーズに即した判断を下せるよう支援します。短期と長期のトレードオフを、見えるかたちで意思決定者の手元に置くこと。それが私たちの仕事です。

8. BtoBの意思決定は、複数の人間によってなされる

BtoBマーケティングがBtoCと異なる最大の点は、購買の意思決定が単独の個人によってなされないことです。

現場の担当者が起案し、部門責任者が承認し、関連部署が稟議に加わり、最終的に経営層が決裁する。このプロセスのどこか一箇所で抵抗が生まれれば、検討は止まります。検討期間は半年に及ぶことも、一年を超えることもあります。各意思決定者は、それぞれ異なる関心と評価軸を持っています。現場担当者は業務の効率化や自身の評価を考え、部門責任者は予算と部門目標を考え、経営層は事業全体への寄与とリスクを考えます。

この構造を理解せずに、現場担当者だけを口説くマーケティング施策は、商談を生んでも受注に至りません。逆に、経営層に響くメッセージだけを設計しても、現場で受け入れられなければ稟議は通りません。BtoBマーケティングの設計は、複数の意思決定者がそれぞれ自分の判断軸において納得できる材料を、適切なタイミングで届けることを前提にしなければ機能しません。

私たちは、この多層的な意思決定構造を踏まえて、メッセージ設計、コンテンツ設計、商談プロセスの設計を行います。誰が、いつ、何を理由に検討から離脱するのか。逆に、誰が、いつ、何を理由に推進者になるのか。この問いを案件ごとに具体化することが、BtoBにおける勝率を上げる起点だと考えています。

9. 依存させない、ということ

私たちが目指すのは、支援なしには動かない組織ではなく、自走できる組織です。

外部支援者にとって、クライアントの依存度が高いことは、契約継続の観点からは都合がよいことです。しかし、それはクライアント企業の長期的な利益とは一致しません。私たちは、支援の過程で得られた知見、判断のロジック、運用のノウハウを、可能な限りクライアント内部に蓄積するかたちで業務を進めます。

ナレッジを移管し、組織の能力を底上げし、最終的には私たちが必要なくなる状態を志向します。そのうえで、なお私たちに依頼したい領域があるならば、それは健全な関係です。私たちは、その関係を選びたいと考えています。

10. 支援の輪郭

ここまでに述べた考え方は、具体的には次のような姿勢として現れます。

業務範囲の定義、進捗報告、成果物の品質管理は、案件ごとに明確な合意を持って運用します。再委託先の選定と管理は、当社の責任において行い、再委託先の業務に起因する事項についても、クライアントに対する責任は当社が負います。利害関係の取り扱いについては、構造的に利益相反の可能性を内包する事業特性を踏まえ、個別の事案ごとに関係するクライアントと協議の上で判断します。機密保持および個人情報の取り扱いは、関連法令および別途定めるプライバシーポリシーに従います。

これらは規程として運用していますが、本ポリシーの趣旨は、その規程の背後にある思想を伝えることにあります。

おわりに

私たちは、BtoBマーケティング支援という領域が、今後さらに専門化と分断を深めていくと考えています。広告は広告の専門家が、SEOはSEOの専門家が、コンテンツはコンテンツの専門家が、それぞれ高度化していきます。営業組織もまた、SDR、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスへと細分化していきます。その流れ自体は健全です。ただし、それらを束ねて事業に接続する役割が、誰の手にも残らないまま空白化していくならば、BtoBマーケティングは細分化された施策の寄せ集めとして痩せていきます。

私たちは、その空白を埋める立場でありたいと考えています。戦略を立てる人として、実行に責任を持つ人として、マーケと営業を繋ぐ人として、そして何より、クライアント企業の事業と一緒に考え続ける人として。

このポリシーは、その立場を表明するものです。

フェノメノン株式会社

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