BtoBマーケティング組織の作り方|失敗しない体制設計と採用の順番
BtoBマーケティング組織の立ち上げや強化を任されたものの、このような不安を感じていませんか?
- 採用してもマーケターが機能せず、「コストだけかかっている」と経営から言われるのが怖い
- 何人体制が正解なのか、どの機能から揃えればいいのかわからない
- 営業との役割分担が曖昧で、いつも「マーケが何をしているかわからない」と言われる
- 他社はどんな体制で成果を出しているのか、ベンチマークが見えない
【このような方におすすめの記事です】
- BtoBマーケ組織を一から立ち上げる責任者・マネージャーの方
- 現状の体制に限界を感じ、組織を見直したい方
- 採用の優先順位や、インハウスと外注の切り分けに悩んでいる方
【この記事でわかること】
- 機能する組織と機能しない組織の分岐点(3つの失敗パターン)
- 人数別・フェーズ別の組織構成の考え方
- 組織を作る前に経営と合意すべき3つのこと
- 最初の1人の採用で何を優先すべきか
- 成果を可視化するKPIと会議体の設計方法
【この記事を読むメリット】
- 「正解がわからない」不安を解消し、自社に合った体制設計の軸が持てる
- 採用・外注の判断基準が明確になり、経営への説明資料に使える
- 組織を作る前の「準備不足」による失敗リスクを大幅に回避できる
【この記事の信頼性】 本記事は、フェノメノン株式会社が15年以上にわたりマーケティング支援を行ってきた実務経験に基づいています。公式ドキュメントおよび一次情報を参照し、実際に成果を上げたプロジェクトの知見を元に、記事を作成しています。編集方針などはこちらからご覧いただけます。
【読了時間】:約13分
それでは、多くのBtoB企業で繰り返されている「失敗パターン」から見ていきましょう。
BtoBマーケティング組織が「機能しない」本当の理由
【このセクションのポイント】
- 失敗の根本原因は「人材不足」ではなく「設計の欠如」にある
- 営業との役割境界が曖昧なまま立ち上げると、責任の押しつけ合いが発生する
- 機能する組織は「何をしない組織か」を先に決めている
BtoBマーケティング組織が機能しない企業には、共通した原因があります。ツールが揃っていない、人材が少ない、予算が足りない。そういった表面的な理由を挙げる企業は多いですが、私たちが15年間で支援してきた企業を振り返ると、本当の原因はほぼ例外なく「組織の設計段階の問題」でした。
なお、Sansan株式会社がBtoB企業のマーケティング担当者900名を対象に行った調査(2023年)では、9割以上が「BtoB事業でもマーケティングは重要」と回答した一方、「十分な成果が出ている」と答えたのはわずか13%にとどまっています。重要性は認識されているのに成果が出ない。この矛盾の根本が、組織設計の問題です(出典:Sansan株式会社「BtoBマーケティングに関する実態調査」2023年6月)。
よくある失敗パターン3選
【この項目のポイント】
- パターン1:目的が曖昧なまま「競合がやっているから」で立ち上げ、KPIが存在しない
- パターン2:営業の「アシスタント部門」として位置づけられ、主体的な戦略を持てない
- パターン3:採用を急ぎすぎて、組織の設計より先に人が来てしまう
私たちが見てきた失敗例を、3つのストーリーとして紹介します。
製造業A社。「競合他社がマーケティング部門を作ったらしい」という情報をきっかけに、経営会議でマーケ組織の設立が決定した。マーケティング経験のある人材を1名採用し、「よろしく頼む」と送り出した。しかし、その担当者が何をすべきか、誰も教えられなかった。KPIは「リード獲得数」と言われたが、そのリードをどう営業に渡すか、営業が何件対応できるか、何も取り決めがなかった。半年後、担当者は展示会の運営と資料作りで手一杯になり、「マーケって結局、営業の雑用係だよね」という認識が社内に広まった。
こうすれば防げた:採用より先に「マーケの責任範囲と成果の定義」を経営・営業と合意する。担当者が来てから設計するのでは遅い。
ITサービス企業B社。インサイドセールスのチームを先に立ち上げ、「マーケからリードを渡してほしい」という状態になった。マーケ側は急いでリード獲得施策を打ったが、量を優先するあまり質が低下。インサイドセールスから「使えないリードばかりだ」とクレームが入り、マーケと営業の関係が悪化。マーケ担当者は「量を増やせ」と「質を上げろ」という矛盾した要求に板挟みになり、1年で退職した。
こうすれば防げた:リードの「量」だけをKPIにしない。SQL(Sales Qualified Lead)の定義を営業と共同で作り、マーケと営業が同じゴールを向く設計にする。
SaaS企業C社。シリーズBの資金調達を機に、マーケ予算が一気に拡大した。CMOクラスの人材を採用し、MAツール・CRM・広告予算を整えた。しかし、CMOが描く戦略と、現場で動ける実行リソースのギャップが大きく、戦略だけが宙に浮いた状態になった。「何の施策がどれだけ効いているか」を可視化する仕組みがなく、経営からは「予算を使っているのに成果が見えない」という批判が出た。
こうすれば防げた:戦略を引ける人と実行できる人を同時に採用するか、最初は実行できる人を先に採り、戦略は外部リソースで補う。
機能する組織と機能しない組織の分岐点
【この項目のポイント】
- 分岐点1:「マーケは何に責任を持つか」が経営・営業と合意されているか
- 分岐点2:KPIが「リード数」だけか、「受注への貢献」まで含まれているか
- 分岐点3:「できないこと」を外部に任せる判断ができているか
15年間で数百社のマーケ組織を見てきて断言できるのは、機能する組織と機能しない組織の違いは「予算」でも「人材の質」でもないということです。機能する組織は、立ち上げ前に「マーケが担う範囲」と「成果の定義」を明文化しています。機能しない組織は、それを後回しにしたまま走り始めます。
【筆者の見解】 私たちが支援してきた企業の中で、マーケ組織の立ち上げに失敗した企業の8割は、「組織を作る前の合意形成」をスキップしていました。採用・ツール導入・予算確保を先に進めてしまい、「誰が何に責任を持つか」が曖昧なまま動き始める。これが最も多い失敗の型です。逆に、立ち上げに成功した企業は、最初の1〜2ヶ月を「合意形成」に使い、その後の実行が驚くほどスムーズでした。準備に時間をかけることを恐れないでください。
【このセクションのまとめ】
- 失敗の根本原因は設計の欠如であり、人材・ツール・予算の問題ではない
- 採用より前に、マーケの責任範囲とKPIを経営・営業と合意することが必須
- 失敗パターンの多くは「後から設計する」という順序のミスから生まれる
組織が失敗する理由を理解したところで、次は「どんな構成にすれば機能するか」を見ていきましょう。
Q:小さな会社でもマーケ組織は必要ですか? A:従業員50名以下であっても、BtoB商材を扱うならマーケ機能は必要です。ただし「組織」である必要はなく、まずは1名が複数の機能を兼務するところから始めるのが現実的です。重要なのは「マーケの責任者が存在する」という状態を作ることです。
Q:マーケ組織がなくても営業が強ければいいのでは? A:短期的には成立しますが、BtoB購買の意思決定者の多くが「営業担当者より先に自社でWebで情報収集している」という実態があります。営業が接触する前の段階でいかに信頼を積み上げるかが、受注率を左右します。マーケ組織の不在は、見込み客の「検討段階への不在」を意味します。
BtoBマーケティング組織の基本構成と役割定義
【このセクションのポイント】
- BtoBマーケ組織が担う機能は5つ:需要創出・リード獲得・ナーチャリング・営業支援・分析
- 人数が少ない段階では「機能」を人に割り当てるのではなく、人が複数機能を担う
- 「この機能は外注できるか」を常に問うことで、少ない人数でも組織が回る
BtoBマーケティング組織が担う業務は多岐にわたります。しかし、すべてをインハウスで抱えようとすることが、組織を疲弊させる原因の一つです。まず「マーケ組織が果たすべき機能」を整理し、それをどう人員配置・外部リソースで実現するかを設計することが先決です。
最小構成(1〜3名)でカバーすべき機能
【この項目のポイント】
- 1名体制では「リード獲得」と「営業への橋渡し」に集中する
- 2名体制では「コンテンツ制作」と「データ分析」を分担できる
- 3名体制で初めて「需要創出施策」と「ナーチャリング」が動き始める
1名体制のマーケターに求めるべき最初の仕事は、シンプルです。「見込み客を獲得し、営業に渡せる状態にすること」。これだけです。コンテンツSEO、ウェビナー運営、展示会出展、広告運用——すべてを一人でやろうとする必要はありません。自社の顧客が「どこで情報収集しているか」を起点に、最も効率のよいリード獲得チャネルを1〜2本に絞ることが、1名体制で成果を出す唯一の方法です。
2名体制になったとき、最初に分担すべきは「作る人」と「測る人」の役割分業です。コンテンツや施策を実行する人と、その効果を数字で追いかける人を分けることで、PDCAのサイクルが機能し始めます。
3名体制では、「今すぐ客」へのアプローチと「まだ早い客」へのナーチャリングを並行して動かせるようになります。MAツール(Marketo、HubSpot、Salesforce Marketing Cloudなど)の本格活用もこの段階から現実的になります。
5名以上になったときの役割分担の考え方
【この項目のポイント】
- 5名以上では「機能別チーム」か「施策別チーム」かの設計判断が必要
- 機能別(コンテンツ・広告・分析)は専門性が高まるが、縦割りになりやすい
- 施策別(認知・獲得・育成)は目標が明確だが、スキルの偏りが生まれやすい
5名を超えたあたりから、マネージャーは「誰が何をするか」を設計する必要が出てきます。フェノメノンが支援するBtoB企業の中で最も多いのは、「機能別」と「フェーズ別」を組み合わせたハイブリッド型です。
たとえば、コンテンツ・SEO担当(1〜2名)、広告・イベント担当(1名)、インサイドセールス連携・ナーチャリング担当(1名)、分析・ツール管理担当(1名)という構成は、多くのBtoB SaaS企業や製造業のマーケ組織で機能しています。
重要なのは、チームの設計を「人に合わせる」のではなく「担うべき機能から逆算する」ことです。採用した人のスキルに合わせて役割を決めると、「誰かがいなくなったときに組織が止まる」という脆弱な体制になります。
インハウスと外部委託の切り分け基準
【この項目のポイント】
- インハウスにすべき業務:戦略設計、顧客理解、KPI管理、営業連携
- 外部委託すべき業務:制作実務、広告運用、ツール実装、SEO施策の実行
- 「コアな判断」は内製、「実行」は外部というのが最も費用対効果の高い設計
よく「マーケ業務を全部インハウスでやるべきか、外注すべきか」という質問を受けます。私たちの答えは明確です。「何を学ぶべきか、何を渡すべきかを判断できる人」は内製し、「その判断を実行する作業」は積極的に外部に委ねてください。
コンテンツ記事の執筆、バナー制作、広告のクリエイティブ制作、SEOの施策実行——これらは外部に委託できます。一方、「どのキーワードで顧客を獲得すべきか」「どのコンテンツが受注に寄与しているか」という戦略的判断は、顧客理解が必要なため内製すべきです。
【筆者の見解】 「インハウス強化」を掲げて全機能を内製化しようとした企業の多くが、採用コストと育成コストに苦しみ、結局「何も深まらない器用貧乏な組織」になっています。一方、「コアな戦略判断は社内、実行は外部パートナー」と割り切った企業は、少ない人員で高いアウトプットを出し続けています。インハウスの価値は「実行力」ではなく「判断力」にあると断言できます。
【このセクションのまとめ】
- 1〜3名体制では機能を絞り、最も効率のよいリード獲得チャネルに集中する
- 5名以上では「担うべき機能から逆算した」役割設計が組織の強度を決める
- インハウスは戦略・判断・連携、外部委託は実行・制作・ツール運用が原則
構成の考え方が整理できたところで、「そもそも組織を作る前に何を決めておくべきか」を解説します。
Q:MAツールはいつから導入すべきですか? A:リード獲得数が月50件を超え、「フォローしきれていないリードが存在する」と感じ始めたタイミングが目安です。それ以前に導入しても、ツールを活用する運用工数が確保できず、宝の持ち腐れになります。まずはスプレッドシートとメール配信ツールで管理できる体制を整えることを優先してください。
Q:インサイドセールスはマーケ組織に入れるべきですか? A:企業によって異なりますが、マーケ組織内に入れるメリットは「リードの質に責任を持つ」ループが短くなることです。営業組織内に入れると、「マーケが渡したリードの質が低い」という議論が永遠に続きます。インサイドセールスをマーケ傘下に置き、SQLの定義をマーケが担うことで、この問題は大幅に改善されます。
組織を作る前に決めるべき3つのこと
【このセクションのポイント】
- 「何を達成するための組織か」を経営と合意せずに動き始めると、評価基準が存在しない組織になる
- KPIを「リード数」だけに設定することが、営業との摩擦を生む最大の原因
- マーケと営業の連携ルールは、マーケ立ち上げより「先に」設計しなければならない
組織を作る順序を誤っている企業は非常に多いです。採用、ツール導入、予算確保——これらは「組織を作る作業」ではなく「組織を動かすための準備」です。本当に最初にやるべきことは、3つの合意形成です。
①マーケの「責任範囲」を経営と合意する
【この項目のポイント】
- マーケが責任を持つのは「リード獲得まで」か「受注貢献まで」かを明確にする
- 責任範囲が曖昧だと、成果が出たときも「誰のおかげか」で揉める
- 「マーケの責任範囲の文書化」は、採用JDを書く前に完成させる
「マーケティング部門に何を期待していますか?」この質問に対して、経営者と営業責任者が同じ答えを出せる企業は、私たちの経験上3割程度です。多くの場合、経営は「ブランド認知の向上」、営業は「すぐに商談につながるリードの供給」、マーケ担当者本人は「コンテンツマーケティングによる長期的な資産形成」と、それぞれ異なるイメージを持っています。
この3者のズレを放置したまま動き始めると、マーケ担当者は3方向から異なる要求を受け、何も深められないまま疲弊します。
責任範囲の合意に使えるシンプルなフレームが「フェーズ別責任分界点」です。認知(マーケが担う)→ リード獲得(マーケが担う)→ SQL化(マーケとインサイドが担う)→ 商談・受注(営業が担う)→ カスタマーサクセス(CSが担う)という流れの中で、どこからどこまでがマーケの責任かを一枚の図で合意します。
②KPIを「リード数」だけにしない
【この項目のポイント】
- リード数のみのKPIは「量は増えたが質が低い」という無限ループを生む
- 推奨するKPI構造:リード数(量)× SQL転換率(質)× 受注貢献額(成果)の3層
- KPIを「マーケだけが持つ数字」にしないことが、営業との連帯感を生む
「月間リード獲得数100件」というKPIは、一見明確に見えますが、実は危険です。100件を達成するためにターゲット外の企業にアプローチすれば、数字は達成できても営業の工数を無駄に使わせることになります。
私たちが推奨するのは、KPIを3層で設計することです。
第1層:リード獲得数(例:月100件)——マーケの活動量を示す指標 第2層:SQL転換率(例:20%)——マーケが届けるリードの質を示す指標 第3層:マーケ起点の受注貢献額(例:月500万円)——最終的なビジネスへの貢献を示す指標
この3層があることで、「量は達成しているが質が低い」「質は高いが量が少ない」という問題を早期に発見・対処できます。また、受注貢献額をKPIに含めることで、マーケが「営業の数字に貢献している」という意識が生まれ、組織間の連帯感が高まります。
③マーケと営業の連携ルールを先に設計する
【この項目のポイント】
- SQLの定義(どんなリードを営業に渡すか)は、マーケ立ち上げ前に営業と合意する
- リードの受け渡しのSLA(例:SQL発生後24時間以内に営業がアクション)を設ける
- 月次の「マーケ・営業合同振り返り会議」を最初からカレンダーに入れる
Sansan株式会社がBtoB企業のマーケ・営業担当者計1,000名を対象に行った調査(2023年)では、マーケティング部門と営業部門の連携に「課題がある」「連携できていない」と回答した人は8割以上にのぼっています。一方、良く連携できていると答えた企業ほど新規開拓や受注が好調という結果も出ており、連携設計の優先度の高さが裏付けられています(出典:Sansan株式会社「BtoBマーケティングと営業の連携実態調査」2023年11月)。
マーケと営業の関係が悪化する企業の典型的なパターンがあります。マーケが「良いリードを渡した」と思っていても、営業側では「なぜこの企業に連絡しなければいけないのか」と感じている。この認識のズレは、SQLの定義が存在しないことから生まれます。
SQLとは「Sales Qualified Lead」の略で、「営業が今すぐ対応すべきリード」の条件を定義したものです。たとえば「従業員100名以上の製造業で、問い合わせフォームから資料請求した企業」のように、企業規模・業種・行動(資料請求、デモ申込、ウェビナー参加など)を組み合わせて定義します。
この定義を、マーケ立ち上げ前に営業責任者と合意しておくことで、「渡したリードへの不満」が劇的に減ります。
【筆者の見解】 「組織を作る前の合意形成」に時間をかけることを嫌がる経営者・マネージャーは多いです。「早く動いた方がいい」という焦りは理解できます。しかし断言します。この段階をスキップした企業のほぼすべてが、6〜12ヶ月後に「組織の再設計」というさらに大きなコストを払っています。最初の合意形成に1ヶ月かけることは、後の6ヶ月の失敗コストを防ぐ投資です。
【このセクションのまとめ】
- 経営・マーケ・営業の3者で「マーケの責任範囲」を文書化することが最優先
- KPIは「リード数・SQL転換率・受注貢献額」の3層構造にすることで機能する
- SQLの定義と連携ルールをマーケ立ち上げ前に営業と合意することが、組織間摩擦を防ぐ
合意形成が済んだら、次は「誰を採るか」という採用戦略に移りましょう。
Q:マーケのKPIは誰が決めるべきですか? A:マーケ責任者が「案」を作り、経営・営業責任者と合意するプロセスが理想です。マーケ側だけが決めると「営業が納得しない数字」になり、経営側だけが決めると「現場が達成できない数字」になります。3者が同席する場でKPIを合意することが、後々の「評価が不公平だ」という摩擦を防ぎます。
Q:KPIを達成できなかったときの評価はどうすべきですか? A:KPIの未達成が「活動量の問題」か「設計の問題」かを分けて評価することが重要です。正しく行動したが市場環境で未達になった場合と、そもそも戦略が間違っていた場合では、対処法も評価も異なります。初年度は特に、「何を学んだか」を評価軸に加えることを推奨します。
採用の順番と「最初の1人」の選び方
【このセクションのポイント】
- 最初の1人は「戦略を描ける人」より「実行して結果を出せる人」を優先すべき
- 採用で失敗する企業の共通点は「ジョブディスクリプションが曖昧」なこと
- 「マーケ経験者」より「自社の顧客を理解できる人」を選ぶ基準を持つ
BtoBマーケ組織の採用で最もよく聞く悩みは「どんな人を採ればいいかわからない」です。これは採用の問題ではなく、「何をしてもらいたいかが決まっていない」という設計の問題です。採用JDを書く前に、前述の責任範囲と最初の6ヶ月で達成すべきゴールを明確にしておくことが前提です。
最初に採るべきは「実行できる人」か「戦略を引ける人」か
【この項目のポイント】
- 外部パートナー(エージェンシーや支援会社)が既にいる場合:戦略を引ける人が先
- 何もない状態からの立ち上げの場合:実行できる人が先
- 「プレイングマネージャー型」が最初の1人として最も失敗が少ない
これは企業の状況によって答えが変わりますが、私たちが見てきた範囲で言えば、「何もない状態からゼロイチで立ち上げる」場合は、まず「自分で手を動かせる実行者」を採るべきです。
理由は単純です。立ち上げ期のマーケ組織に最も必要なのは「仮説を立てて実行し、データから学ぶ」サイクルを高速で回すことです。このサイクルを回せるのは、自分で手を動かせる人間だけです。「戦略設計はできるが実行はできない」タイプのマーケターを最初に採用した場合、戦略だけが出来上がり、実行リソースがないという状態に陥ります。
一方、すでに外部のエージェンシーやフリーランスが実行を担っている場合は、その実行をマネジメントし、施策全体の戦略を引ける人材を先に採用することが有効です。
採用で失敗する企業が共通してやっていること
【この項目のポイント】
- 失敗パターン1:「BtoBマーケ経験3年以上」のような条件だけで選ぶ
- 失敗パターン2:採用時に期待値のすり合わせをしない
- 失敗パターン3:入社後3ヶ月の「オンボーディング設計」がない
BtoBマーケの採用で失敗した企業のほぼすべてに共通することがあります。「スキルは合っていたが、カルチャーが合わなかった」または「期待していたことと実際の業務が違った」という理由での離職です。
採用時のスキルマッチは確認できますが、「この企業のマーケ環境で機能するか」は別の問題です。特にBtoBマーケの場合、「自社の顧客への深い理解」が成果に直結します。業界知識がなくても習得意欲があるか、顧客の課題に本質的な関心を持てるかを採用面接で確認することが重要です。
また、入社後3ヶ月のオンボーディング設計がない企業も多いです。「入ったら自分でキャッチアップして」という丸投げは、優秀なマーケターほど「この会社では成長できない」と判断して離職します。入社1ヶ月目は「理解」、2ヶ月目は「実行」、3ヶ月目は「改善提案」という段階的なロードマップを用意することが、早期定着に直結します。
【筆者の見解】 断言します。「マーケ経験者を採ればうまくいく」という期待は間違いです。マーケのスキルは前職から持ち込めますが、「自社の顧客を誰よりも深く理解しようとする姿勢」は職務経歴書には書かれていません。私たちが15年間で見てきた中で、予想以上に活躍したマーケターの共通点は一つです。「マーケ専任経験は少ないが、自社の営業に同行し、顧客の声を徹底的に拾いに行った人」。逆に、華やかな経歴を持ちながら成果を出せなかったマーケターは、顧客より「施策」に向いていた人でした。採用基準に「顧客への好奇心」を加えることが、採用の成功率を確実に上げます。
【このセクションのまとめ】
- ゼロイチの立ち上げ期は「実行できるプレイングマネージャー」を最初の1人にする
- 採用JDには「最初の6ヶ月で達成すべきゴール」を明記し、期待値のズレを防ぐ
- 入社後3ヶ月のオンボーディングロードマップを用意することが、早期離職を防ぐ
採用の考え方が整理できたところで、組織を継続的に機能させるための「運用設計」に移ります。
Q:採用にどのくらいの時間がかかりますか? A:BtoBマーケの即戦力採用は、求人掲載から内定まで平均2〜4ヶ月かかるのが実態です。採用活動を始める前に、前述の「責任範囲の合意」と「JDの明確化」を済ませておかないと、採用期間がさらに長引きます。「採用が決まってから組織設計をする」では常に後手に回ります。
Q:フリーランスから始めるのはありですか? A:特定の施策(コンテンツSEO、広告運用など)の立ち上げを試す段階では有効です。ただし、フリーランスは「社内の調整や営業連携」を担えないため、社内のハブになる正社員マーケ担当は早期に採用することをお勧めします。
組織を機能させるための運用設計
【このセクションのポイント】
- 組織の「作り方」より「回し方」で成果が決まる
- 会議体の設計は「情報共有」ではなく「意思決定の場」として設計する
- ダッシュボードは「見るためのもの」ではなく「議論を起こすためのもの」
採用・体制・KPIが整っても、「週次でどう動くか」の設計がなければ組織はすぐに形骸化します。多くのマーケ組織が陥るのは、「全員が忙しそうに動いているが、何が成果に繋がっているかわからない」という状態です。これは運用設計の問題です。
週次・月次で回すべきマーケ組織の会議体
【この項目のポイント】
- 週次:施策の実行状況と数字の確認(30分以内)
- 月次:KPI達成状況の振り返りと翌月の戦略調整(60〜90分)
- 四半期:営業・経営も交えた成果報告と中期戦略の見直し
フェノメノンが支援先に推奨している会議体の設計は以下のとおりです。
週次マーケ定例(毎週月曜30分):先週の主要KPIの確認、今週の施策実行タスクの確認、ブロッカー(障害)の共有と解決。この会議の目的は「情報共有」ではなく「今週何を優先するか」の意思決定です。議事録より行動リストを重視します。
月次振り返り会議(月初90分):KPI達成状況の数字レビュー、「なぜ達成・未達だったか」の因果分析、翌月の施策優先度の決定。重要なのは、数字の報告で終わらせないことです。「なぜその結果になったか」の仮説を出し、翌月の施策に反映するまでを会議内で完結させます。
四半期合同レビュー(営業責任者・経営も参加):マーケ起点の受注貢献額の報告、SQLの質と量に関する営業からのフィードバック、四半期の施策振り返りと翌四半期の投資配分の決定。この会議の存在が、マーケが「コストセンター」から「収益貢献部門」として認められるかどうかの分岐点になります。
成果を可視化する指標ダッシュボードの作り方
【この項目のポイント】
- ダッシュボードに載せる指標は「意思決定に使う数字」に絞る
- 推奨する基本指標:チャネル別リード数・SQL転換率・受注貢献額・コンテンツ別流入数
- Googleデータポータル(Looker Studio)やHubSpotのレポートで無料から始められる
「数字を見ている」と「数字で意思決定している」は全く違います。多くのマーケ組織が陥るのは、指標を追いすぎて「何を改善すべきかわからない」という状態です。
ダッシュボードに載せる指標を決めるときの判断基準はシンプルです。「この数字が下がったら、何をどう変えますか?」という問いに答えられない指標は、ダッシュボードから外してください。
推奨する最小限のダッシュボード構成は次の4つです。
チャネル別リード獲得数(SEO/広告/ウェビナー/展示会など):どのチャネルが機能しているかを把握するため。SQL転換率(チャネル別):量だけでなく質を測るため。受注貢献額(マーケ起点の案件):経営・営業への説明責任を果たすため。コンテンツ別オーガニック流入数:長期的な資産形成の進捗を確認するため。
【筆者の見解】 「ダッシュボードを作ること」が目的化している組織を何社も見てきました。Google Analytics、Salesforce、HubSpot、MAツール——それぞれのデータを繋ぐことに多大な工数をかけ、完成した頃には誰もそのダッシュボードを見なくなっている。そんな組織の末路です。最初はスプレッドシートで十分です。毎週5つの数字を手で入力して、それを元に議論する習慣を作ることの方が、高度なBIツールを導入するより100倍価値があります。
【このセクションのまとめ】
- 週次・月次・四半期の3層の会議体を設計し、それぞれの目的(実行確認・振り返り・経営報告)を明確にする
- ダッシュボードは「意思決定に使う指標」だけに絞り、まずはスプレッドシートから始める
- 四半期合同レビューで営業・経営に受注貢献を可視化することが、マーケの組織内評価を高める
最後に、私たちが見てきた「成功する組織」に共通するパターンをまとめます。
Q:施策の効果測定はどのツールを使えばいいですか? A:まずはGoogle Analytics 4(無料)とCRMの組み合わせで始めることを推奨します。Salesforce CRMとMAツール(HubSpot・Marketo)が連携できると、リード獲得から受注までのデータが繋がり、マーケ起点の受注貢献が可視化できます。ただし、ツール導入より「何を測るか」の設計が先です。
Q:マーケ組織のROIはどうやって経営に説明しますか? A:最も説得力があるのは「マーケ起点の受注案件の受注額累計」です。「マーケが生み出したリードが、最終的にいくらの受注につながったか」を四半期ごとに報告できれば、経営からの予算承認が通りやすくなります。CRMでリードのソースを管理することが、この計算の前提です。
フェノメノンが見てきた「成功する組織」の共通点
【このセクションのポイント】
- 成功する組織は「マーケが経営の言語(受注・売上)で話せる」
- 成功する組織は「失敗を組織の問題として扱い、個人を責めない」
- 成功する組織は「完璧な体制を目指さず、小さく始めて早く学ぶ」
15年間で数百社のBtoBマーケ支援を通じて、成果を出し続ける組織には明確な共通点があります。それは「正しい体制」でも「優秀な人材」でもありません。
第一の共通点は、マーケ責任者が「経営の言語」で話せることです。リード数やインプレッションではなく、「マーケが起点となった受注額は月数百万〜数千万円規模」「マーケ施策のROIは数十〜数百%」という形で、経営の関心事(売上・コスト・利益)に接続した報告ができる組織は、予算と権限を継続して与えられます。
第二の共通点は、施策の失敗を「個人の責任」ではなく「組織の学習機会」として扱う文化です。新しい施策を試して失敗したとき、「誰がこれを決めたんだ」という文化の組織では、次第に誰も新しい挑戦をしなくなります。成功する組織のマネージャーは「なぜ失敗したか」を問い、「どうすれば次は成功するか」に時間を使います。
第三の共通点は、「完璧な体制を作ってから動く」ではなく「動きながら体制を作る」という姿勢です。ツールが揃っていなくても、人員が足りなくても、「今できる最善の施策」を実行しながら、学んだことを体制設計に反映していく。この姿勢を持つ組織が、2〜3年後に強いマーケ組織になっています。
【筆者の見解】 「理想の体制が整ったら動き始める」と言う組織は、永遠に動き始めません。私たちが支援してきた中で最も成長したマーケ組織は、ほぼ例外なく「まだ準備が整っていない」と言いながらも動き始めた組織です。体制は作るものではなく、動きながら育てるものです。完璧を求めることが、組織の最大のリスクになります。
【このセクションのまとめ】
- 成功するマーケ組織は「経営の言語(受注・売上)」でマーケの成果を語れる
- 失敗を個人の責任ではなく組織の学習として扱う文化が、継続的な改善を生む
- 「完璧な体制を待つ」のではなく「動きながら体制を育てる」が成功の共通姿勢
まとめ
【この記事のまとめ】
- 失敗の根本原因は設計の欠如であり、採用・ツール・予算を揃える前に「責任範囲の合意」が必須
- KPIはリード数だけでなく、SQL転換率・受注貢献額の3層構造で設計することで機能する
- 最初の1人は「実行できるプレイングマネージャー」を採り、戦略は後から補強する
- 週次・月次・四半期の会議体を設計し、ダッシュボードは意思決定に使う指標だけに絞る
- 「完璧な体制を作ってから動く」ではなく「動きながら体制を育てる」姿勢が成功を生む
【あなたが次に取るべきアクション】
これからBtoBマーケ組織を立ち上げる方へ: まず「マーケの責任範囲と成果の定義」を経営・営業と合意する場を設けてください。この合意なしに採用・ツール導入を進めると、6〜12ヶ月後に組織の再設計が必要になります。
既にマーケ組織があるが機能していないと感じている方へ: 現在のKPI設定を見直してください。「リード数のみ」であれば、SQL転換率と受注貢献額を加える議論を営業責任者と始めることが、最初の改善ステップです。
マーケ組織の採用を検討している方へ: 採用JDを書く前に「最初の6ヶ月で何を達成してほしいか」を明文化し、入社後3ヶ月のオンボーディングロードマップを先に設計してください。
BtoBマーケティング組織の立ち上げ・強化でお困りの際は、フェノメノン株式会社がサポートします。15年以上のBtoBマーケティング支援実績を持つ私たちが、貴社の課題に合わせた最適なご提案をいたします。まずはお気軽にお問い合わせください。
よくある質問
Q1:BtoBマーケ組織は何名から作れますか? A1:1名から始めることは可能です。重要なのは人数ではなく「マーケの責任者が存在し、経営・営業と合意した役割・KPIを持っている」という状態です。1名でも責任範囲とKPIが明確であれば、機能するマーケ組織の最小単位として成立します。
Q2:マーケティング予算はどのくらい必要ですか? A2:私たちの支援先では、売上の3〜7%程度をマーケ予算に充てている企業が多い印象です。ただし金額より優先すべきは「何に使うか」の設計です。立ち上げ期は施策費より「組織設計と人材確保」への投資を優先してください。ツール・広告費の前に、「マーケを設計できる人材」にコストをかけることが、最も費用対効果の高い投資です。
Q3:営業組織との対立を防ぐにはどうすればいいですか? A3:最も効果的な対策は「共通のKPI」を持つことです。マーケと営業が「受注貢献額」という同じ目標を向いている組織では、対立ではなく連帯感が生まれます。また、月次の合同振り返り会議を定例化し、双方が数字の背景を理解する場を作ることも有効です。
Q4:小規模BtoB企業でもコンテンツSEOは有効ですか? A4:有効です。ただし、成果が出るまでに6〜12ヶ月かかることを前提に、長期施策として位置づけてください。即効性を求める場合は、コンテンツSEOと並行してウェビナーや展示会など短期でリードを獲得できる施策を組み合わせることを推奨します。
Q5:マーケ組織の立ち上げを外部に支援してもらうメリットは何ですか? A5:最大のメリットは「自社に前例がなくても、他社の成功・失敗パターンを参照できる」点です。社内だけで設計すると、ベンチマークが不在のため「これで正しいのか」という判断が常に不安定になります。外部支援を活用することで、組織設計のスピードと精度が大幅に向上します。
Q6:マーケ責任者不在で担当者だけが動いている状態を改善するには? A6:まず担当者に「何に困っているか」を正直にヒアリングしてください。多くの場合、「経営への説明方法がわからない」「施策の優先順位を誰も決めてくれない」という構造的な問題が根本にあります。責任者不在の状態では担当者が疲弊します。マーケ責任者の採用か、兼務でも良いので「マーケの意思決定者」を明確にすることが急務です。
Q7:BtoB SaaS企業と製造業では、マーケ組織の作り方は違いますか? A7:顧客の購買サイクルと検討期間が異なるため、施策の優先度は変わります。BtoB SaaSは検討期間が短くデジタル完結型が多いため、コンテンツSEOと無料トライアルの導線設計が重要です。製造業は検討期間が長く対面商談が必要なケースも多いため、展示会・ウェビナーと長期ナーチャリングの組み合わせが有効です。ただし、「責任範囲の合意・KPI設計・営業連携」という組織設計の基本は業種を問わず同じです。
参考文献・出典
- 才流「モデルケースで解説、BtoB事業のマーケティング組織」 https://sairu.co.jp/method/17417/ ※BtoBマーケ組織の役割分担・フェーズ別構成の参考として活用
- leapt「BtoBマーケティング組織の構造と作り方」 https://blog.leapt.co.jp/how-to-build-btob-marketing-team ※営業組織との連携設計に関する参考として活用
- ALUHA「BtoBマーケティング組織の作り方・立ち上げ時にやっておくべき5つのこと」 https://btobmarketing.aluha.net/column-wp/bm/btobmarketing-starting-organization ※BtoBマーケサイクルの定義・役割分担の考え方として参考
- zenforce「型別解説・BtoBマーケティング組織の作り方」 https://zenforce.jp/blog/how-to-create-a-btob-marketing-section ※BtoB購買プロセスの変化に関する参考として活用
- Sansan株式会社「BtoBマーケティングに関する実態調査」(2023年6月) https://jp.corp-sansan.com/news/2023/0601.html ※9割以上がBtoBマーケティングを重要と回答、成果が出ている企業の取り組みデータとして引用
- Sansan株式会社「BtoBマーケティングと営業の連携実態調査」(2023年11月) https://jp.corp-sansan.com/news/2023/1127.html ※8割以上がマーケ・営業連携に課題ありと回答したデータとして引用