【CASE 01|BtoB SaaS】リードは伸びていたが、商談の質が崩れていた

リードは伸びていた。商談の質が崩れていた

このページは、フェノメノンが過去に関与した案件のうち、BtoB SaaS事業における一例について、構造的にどのような課題が起きていたのか、どう関与したのかを記したものです。なお、守秘義務の関係から、業種詳細・正確な事業規模・KPIの絶対値は記載していません。

クライアントの概要

  • 業種:BtoB SaaS(業種詳細非開示)
  • 規模:従業員 100〜300名規模
  • 関与期間:18ヶ月
  • 関与体制:マーケ責任者・営業責任者と並走
  • 関与領域:マーケティング戦略の再設計/広告・LP・MAシナリオの再構築/ICP定義の再構築運用/KPIダッシュボードと計測設計

状況の輪郭

クライアントは、特定業種向けの業務SaaSを展開する事業者でした。創業から数年が経過し、プロダクトは初期のPMFを越え、機能拡張とエンタープライズ顧客の獲得が次のフェーズとして見えていた段階です。マーケティング組織は十名規模で、広告運用、コンテンツ、MA、インサイドセールスの機能が分業として整理されていました。

関与開始時点で、マーケティング部門は社内で順調と評価されていました。MQL数は前年比で大きく伸び、四半期ごとの目標は連続して達成されていました。一方、営業部門の側では別の感触が広がっていました。商談には進むが、決まらない。決まっても単価が伸びない。フィールドセールスから「リードの質が落ちている」という声が継続的に上がっていました。

私たちが見たもの

最初に行ったのは、KPIを一段下に掘ることでした。MQLという表面指標は順調でしたが、その下にある商談化率は、二年前の12%から直近の6.4%まで落ち込んでいました。受注単価も、コア顧客層からの受注比率が下がる形で、ゆるやかに低下していました。リードは増えていたが、リードの構成が変わっていました。

一段下げて見えてきたこと

各施策の運用を点検していくと、構造的なずれが見えてきました。広告のキーワード設計、LPの訴求軸、MAのシナリオ、コンテンツのテーマ選定。これらが、いずれも「拡張ICP」と呼ぶべき周辺顧客層に最適化されていました。

拡張ICPは、コアICPに比べて検索ボリュームが大きく、CPAも低く出ます。リードを獲りやすい層です。施策の運用責任者がCPAとリード数を主指標として動いていれば、施策は自然と拡張ICP寄りに最適化されていきます。各人が与えられたKPIに対して合理的に振る舞った結果、施策全体としてはコアICPから離れていきました。

掘り当てた根因

構造のさらに上流に、もう一つ別の問題がありました。ICP定義そのものが、三年間更新されていなかったのです。

創業期のPMF時点で設定したICPが、プロダクトの機能拡張、価格改定、競合環境の変化を経たあとも、社内ドキュメントの上では同じまま残っていました。そして、現場ではこれが運用に使われていませんでした。マーケは現場感覚に基づくICP像を持ち、営業は実際に決まった顧客の像を持ち、両者は別の前提で動いていました。共通言語が消えていました。

ICP定義の年次更新という、定型業務として軽く扱われがちな工程が止まっていた。この一点が、各施策の個別最適化を許し、マーケと営業の分断を生み、リードの構成変化を引き起こしていました。

私たちが解いた手順

行ったのは、ICP定義を再構築することと、そこから施策設計を巻き戻すことです。ドキュメントを書き換えるだけでは運用に接続されないため、定義・施策・計測の三層を同時に動かしました。

まず、経営層・マーケ責任者・営業責任者と並走する形で、コアICPの再定義を行いました。直近二年間で受注した顧客のうち、LTVが高く、解約率が低く、アップセルが進んでいる層を逆引きし、その共通項を構造化する作業です。拡張ICPは「いずれコアICPに転化しうる育成対象」として明確に分離し、別のナーチャリングフローを設計しました。

次に、広告・LP・MAの運用を、コアICP集中設計に巻き戻しました。広告のキーワード、LPの訴求、MAのシナリオを、コアICPと拡張ICPで分離した二系統に再編しました。CPAは短期的に上がりましたが、商談化率と受注単価は回復に向かいました。

そして計測設計を作り直しました。ICPセグメント別の商談化率と受注単価を可視化するダッシュボードを構築し、営業との隔週フィードバック会議で、現場で発見された定義のズレを継続的に補正していく仕組みにしました。

この三層を、フェノメノン側の同じ人間が担当しました。戦略を決めた者が、運用に手を入れ、計測の数字を読む。判断と実行と検証を別の人間に分けない関与体制です。

何が変わったか

関与開始から十八ヶ月の時点で、商談化率は元の水準を超えるところまで回復し、受注単価もコア顧客層の比率が戻ったことで緩やかに上昇しました。MQL数は一時的に減りましたが、これは想定した動きであり、経営層との合意のもとで受け入れた変化です。

数字の回復と並行して、ICP定義が組織内で運用ドキュメントとして機能するようになりました。半年に一度のレビューサイクルが組まれ、マーケと営業が同じICP像で会話する状態になりました。

似たような状況に心当たりがある方へ

リード数は順調なのに営業から「質が落ちた」という声が上がる。MQLは増えているのに商談化率が下がっている。ICP定義が何年も更新されていない。こうした状況に心当たりがあれば、一度、構造を一緒に見にいくところから始めませんか。

事業フェーズや組織体制によって、見にいくべき層は変わります。最初のご相談では、現状の課題が表面の症状なのか、構造の問題なのか、もう一段下の根因にあるのかを、対話のなかで仮置きしていきます。具体的なご支援に進むかどうかは、その対話のあとで判断していただいて構いません。

業務提携や各種案件のご相談につきましては、フォームよりお気軽にお問い合わせください。内容を確認のうえ、担当者よりご連絡させていただきます。








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