【CASE 02|IT受託・SI】リードは獲れていたが、商談に進まなかった
リードは獲れていた。商談に進まなかった
このページは、フェノメノンが過去に関与した案件のうち、IT受託・SI事業における一例について、構造的にどのような課題が起きていたのか、どう関与したのかを記したものです。なお、守秘義務の関係から、業種詳細・正確な事業規模・KPIの絶対値は記載していません。
クライアントの概要
- 業種:IT受託・システムインテグレーション(業種詳細非開示)
- 規模:従業員 200〜500名規模
- 関与期間:15ヶ月
- 関与体制:マーケ責任者・営業責任者と並走
- 関与領域:購買プロセスの再定義/フェーズ別リード定義と引き継ぎ設計/フェーズ別コンテンツマップ構築/MAによる進度判定運用/転換率計測の設計
状況の輪郭
クライアントは、特定領域のシステム開発・運用を主力とする事業者でした。長年にわたり既存顧客からの継続案件と紹介で事業を伸ばしてきた組織で、数年前に新規顧客開拓を目的としたマーケティング部門を立ち上げていました。Webサイトの刷新、コンテンツ制作、広告運用、ホワイトペーパーのダウンロード導線、ウェビナーの定期開催。一通りの施策は走っていました。
関与開始時点で、リード獲得数は計画値を上回って推移していました。月次のレポートでは、流入数、CV数、CPAのいずれも目標達成の表示が並んでいました。一方、営業部門にリードを引き渡したあと、商談化に至る比率が極端に低い状態が続いていました。営業からは「マーケから渡されるリードは温度が低すぎて、商談にならない」という声が継続的に上がり、マーケ側は「営業がフォローしきれていないだけだ」と反論する。この応酬が固定化していました。
私たちが見たもの
最初に行ったのは、両部門が使っている言葉の定義を一つひとつ確認することでした。
マーケが「商談化できるリード」と呼んでいたのは、ホワイトペーパーをダウンロードし、その後のメール開封率が一定以上のリードでした。これをMQLとしてインサイドセールスに引き渡していました。一方、営業が「商談化できるリード」と呼んでいたのは、予算と決裁プロセスが見えていて、具体的なRFP発出時期が想定されているリードでした。
両者の間には四つか五つの段階が抜けていました。マーケのMQLと営業のSQLの間に、本来必要な検討段階が定義されていない。マーケはファネルの上端で「興味」を獲得し、営業はファネルの下端で「稟議」と向き合う。中間の段階を担う運用設計が存在しないため、マーケから営業への引き継ぎが、認知段階のリードを稟議段階のフローに放り込む形になっていました。

一段下げて見えてきたこと
クライアントの主力商材であるシステム開発案件は、購買プロセスが長く、関与者が多いタイプの取引でした。情報収集の開始から発注決定まで六ヶ月から一年を要し、その間に現場担当者、IT部門責任者、事業部門責任者、経営層、購買部門が、それぞれ異なるタイミングで意思決定に加わっていました。
ところが社内では、この購買プロセスが文書化されていませんでした。営業は個々の経験のなかで段階を感じ取りながら案件を進めていましたが、それを共有言語として持っていなかった。マーケは購買プロセスを知らないまま、認知獲得の施策と一部のホワイトペーパー施策だけで「リードを温める」ことを期待されていました。
各意思決定者がどの段階で、何を理由に検討から離脱するのか。逆に、誰がどの段階で推進者になるのか。この問いに答える材料が、組織として整備されていない状態でした。
掘り当てた根因
根因は、購買プロセスが組織として定義されていないことでした。営業の頭の中には経験知としてのプロセスがあり、マーケの頭の中には認知獲得モデルとしてのファネルがあった。両者は別の世界観で動いていて、リードという同じ言葉で違うものを指していました。
マーケと営業の分断と呼ばれている現象は、しばしば、この種の世界観のずれとして現れます。組織図上は連携しているように見えても、購買プロセスという共通の地図を持たないかぎり、引き継ぎは機能しません。
私たちが解いた手順
行ったのは、購買プロセスを六段階に再定義することと、各段階で何が起きているかを記述すること、そして各段階に対応する施策を設計し直すことでした。
まず、営業責任者と現場のフィールドセールスへのヒアリングを通じて、過去二年間に受注に至った案件と失注した案件の進行を時系列で再構成しました。認知、興味、検討、比較、稟議、決裁という六段階に分け、各段階で意思決定者が誰になり、何を判断材料にしているか、どのような情報が必要とされるかを書き出しました。

次に、この六段階に対応するコンテンツマップを構築しました。認知段階には業界課題を扱う記事、興味段階には自社の方法論を示すホワイトペーパー、検討段階には導入事例と要件定義の手引き、比較段階には他社との違いを構造的に示すドキュメント、稟議段階には決裁者向けのROI試算資料、決裁段階には契約条件と推進体制の説明資料。各段階で営業が顧客に渡せる資料を整備し、MA上で配信タイミングを設計しました。
そして、各段階の転換率を計測する仕組みを作りました。フェーズ間でリードが落ちている地点を可視化し、どの段階のコンテンツが不足しているか、どの段階で営業のフォローが遅れているかを継続的に補正していく運用です。
戦略の再定義、コンテンツマップの設計、MA運用の改修、転換率の計測。この一連の作業を、フェノメノン側の同じ人間が担当しました。
何が変わったか
関与開始から十五ヶ月の時点で、マーケから営業への引き継ぎリードの商談化率が改善し、営業側からの「リードの温度が低い」という声は減少しました。リード総数自体は当初と比較して微増にとどまりましたが、各フェーズで十分にナーチャリングされた状態で営業に引き継がれるため、商談着地までの期間も短縮しました。
数字の改善と並行して、マーケと営業が購買プロセスという共通の地図を持つようになりました。月次の合同レビュー会議では、どの段階で何が起きているかを同じ言葉で議論できる状態になり、施策の優先順位づけが両部門の合意のもとで決まるようになりました。
似たような状況に心当たりがある方へ
リードは獲れているのに商談に進まない。マーケと営業が同じ「リード」という言葉で違うものを指している。購買プロセスが組織として定義されていない。こうした状況に心当たりがあれば、一度、構造を一緒に見にいくところから始めませんか。